日本初のマラソン大会を題材にした映画「サムライマラソン」(バーナード・ローズ監督)が、22日からTOHOシネマズ日比谷(東京都千代田区)ほかで公開された。前半は、葛藤や野望を抱えた侍たちがゴールを目指す姿を笑いを交えながら描出。後半は一転、幕府の差し向けた刺客を、侍たちが食い止めようと奮起する活劇になる。佐藤健さんや森山未來さん、染谷将太さんら今をときめく俳優たちが、泥まみれになりながらひた走る姿は見ものだ。
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幕末の1855年。安中藩主の板倉勝明(長谷川博己さん)は、開国を迫る米国の侵略を疑い、その脅威に備え、藩士の心身鍛錬のために15里(約58キロ)に及ぶ「遠足(とおあし)」を開催する。優勝すればどんな望みもかなえてもらえると聞いた藩士たちは色めき立つ。ところがその遠足を謀反の動きと見た幕府大老の五百鬼祐虎(豊川悦司さん)は、安中藩とり潰しを狙い、勝明暗殺の刺客を放つ。果たして藩の運命は? 優勝は誰の手に……というストーリー。ほかに小松菜奈さん、青木崇高さん、竹中直人さんらが出演する。
原作は、日本初のマラソン大会といわれる「安政遠足(あんせいとおあし)」を基に描いた土橋章宏さんによる時代小説「幕末まらそん侍」(ハルキ文庫)。勝明の娘・雪姫(小松さん)との婚姻を揺るぎないものにするために走る重臣の息子・辻村平九郎(森山さん)、金か名誉かで揺れる足軽の上杉広之進(染谷さん)、藩を守るために走る隠密の唐沢甚内(佐藤さん)らそれぞれの人間性が走り方に表れていて面白い。
不思議な映画だ。正直なところ、見る前は、監督が英国出身であることから“なんちゃって侍映画”になっているのではないかと懸念した。ところが実際は幕末の日本を描いた時代劇として違和感なく仕上がっていて驚いた。「不滅の恋/ベートーヴェン」(1994年)や「パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト」(2013年)といった伝記映画を手がけてきたローズ監督だけのことはあると納得。(りんたいこ/フリーライター)
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