ブック質問状:「海の底のピアノ」 特撮脚本家が究極の愛の物語を描く

井上敏樹さんの「海の底のピアノ」(朝日新聞出版)
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井上敏樹さんの「海の底のピアノ」(朝日新聞出版)

 話題の書籍の魅力を担当編集者が語る「ブック質問状」。今回は、井上敏樹さんの「海の底のピアノ」(朝日新聞出版)です。同社書籍編集部の渡辺圭さんに作品の魅力を聞きました。

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 −−この作品の魅力は?

 一見、病的な母親の下でピアノの英才教育を受けてきた和憲と、幼いころに誘拐され、監禁生活を強いられてきた水雪が音楽を通じて運命的な出会いをする“究極の愛の物語”です。「鳥人戦隊ジェットマン」や「仮面ライダー龍騎」、「仮面ライダー555」のほか、数々の名作を生み出してきた井上敏樹先生ならではの人間の本質に迫る物語となっています。また、これだけのページ数がありながら、文章によどみがなく、極めて読みやすく簡潔でなおかつ力強いという、理想的な作品でもあります。

 −−作品が生まれたきっかけは?

 書籍の帯にも推薦コメントを寄せていただきました川上弘美先生と井上先生が交流があり、井上先生が個人的に書かれていた本作を川上先生が読んで「これはぜひ出すべきだ」と弊社(私ではない別の編集者)にご相談してくださったのがきっかけです。一読して、すぐに「これは生半可な企画にはならないぞ」と居住まいを正しました。

 −−作者はどんな方でしょうか?

 作品は繊細、人柄は豪快。これにつきます。しかも特技は料理。打ち合わせに行くのが楽しみでなりません。井上先生との打ち合わせは本題が10分で、あとはまるで関係のない話をしていることが多いのですが、経験則で言いますと、こういう場合は企画がうまく進む場合が多く、だいたいいつも料理か食事の話になります(笑い)。

 −−編集者として、この作品にかかわって興奮すること、逆に大変なことについてそれぞれ教えてください。

 脚本の世界でも“井上作品”は特別な意味合いを持っておりますが、小説でも変わりありません。初稿のときに比べてかなり短くしたのですが、どんどん完成されていく過程は興奮しますね。また、今回は川上弘美先生と、批評家の宇野常寛さん、東映のプロデューサーで「平成ライダー」シリーズを生んだ白倉伸一郎さんに帯のコメントをいただいたのですが、御三方のコメントがまさにこの作品の魅力をズバリ言い当てており、いい作品が皆さんのイマジネーションを喚起する瞬間に立ち会えたのは編集者冥利に尽きます。

 −−今後の展開は?

 詳しくは申し上げられませんが、次回作を構想中です。また、別の形で井上先生の文章を世に出す企画も進んでおります。

 −−最後に読者へ一言お願いします。

 発売以来、大きな反響をいただきまして本当にありがとうございます。432ページという破格の分厚さで、読むのにパワーを必要とする作品ではありますが、その分、読んで力がわく圧倒的な物語となっております。皆さまのすべての想像力を動員して読んでいただければ幸いです。

 朝日新聞出版 書籍編集部 渡辺圭

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