平岩紙:「とと姉ちゃん」夫・ピエール瀧とは「阿吽の呼吸」 心の恩師は「忌野清志郎さん」

「とと姉ちゃん」に出演する平岩紙さん
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「とと姉ちゃん」に出演する平岩紙さん

 NHK連続テレビ小説とと姉ちゃん」に、ピエール瀧さん演じる森田屋の主人・宗吉の妻・照代役で出演している平岩紙さん。平岩さんといえば、松尾スズキさんが主宰する「大人計画」に所属し、ドラマや映画、舞台にと幅広く活躍する個性派女優の一人で、「とと姉ちゃん」でも照代の穏やかでありながらどこか“目が笑っていない表情”とともに見る者に強い印象を残している。7月28日放送の第100回での“再登板”以降も、瀧さんとの夫婦コンビで存在感を発揮。「どこか自分の、平岩紙としてのスパイスを効かせていたいっていうのは昔からある」とひそかな野望を抱く平岩さんに、瀧さんとの“夫婦仲”を中心に、役や女優業への思いを聞いた。

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 「とと姉ちゃん」は、生活総合誌「暮しの手帖」創業者の大橋鎮子の軌跡をモチーフとしたドラマ。11歳で父を亡くしたことを境に家族の父代わりとなった常子(高畑充希さん)が浜松から上京し、女性向けの雑誌を創刊。高度経済成長期を生きる女性に支持されていく……というストーリー。森田屋は常子たちが住み込みで働いていた老舗の仕出し屋で、戦争により東京の深川から高崎へと移転していたが、終戦後、宗吉と照代は東京へと戻り、洋食と和食を兼ねた「キッチン森田屋」として新たなスタートを切った。

 ◇夫婦役再演「やるべき役割を分け合って作っている」

 職人として仕事に誇りを持ち、裏表がなく、怒りっぽいが情に厚い江戸っ子かたぎの宗吉。照代は、そんな宗吉を陰ながら支え、物事が円滑に進むよう、常子らをはじめとする周囲を気遣い立ち回ってきたが、再登場してからは、大女将のまつ(秋野暢子さん)亡きあとということもあり、これまでに比べてより芯の強さが兼ね備わったようにも見える。

 平岩さんと瀧さんの間には以前から共通認識として「夫婦の主導権は照代が握っているなっていうのがあった」といい、「まつさんがいなくなって、しっかりしなくちゃと思う半面、年を取ってきて、夫婦でもう少し仲よく支え合っているような印象で。瀧さんの格好がコックさんになって、私もシワを増やしたり、見た目も変わっているので、それに引っ張ってもらって、どっしりと地に足がついた、落ち着いた印象になれば」と仕出し屋時代からの変化を明かす。

 瀧さんと改めて夫婦役を演じるにあたって、意識した点は「特に『こうしよう、ああしよう』とは話さず、何となく感覚を読み合って作っていった部分があったので……。そこは阿吽(あうん)の呼吸のように、自分たちのやるべき役割を分け合って作っている感じ」と笑顔を見せる。キッチン森田屋についても「こじんまりしていて、あの狭さが妙に落ち着きますよね。(瀧さんの)似顔絵を見た時は、『これ、Tシャツを作らなくちゃダメでしょう』って(笑い)。可愛らしいセンスのある店だなって思っています」と愛着を感じているようだ。

 ◇ピエール瀧の演技は「メソッドを分かった上で、自由な部分がある」

 夫役の瀧さんといえば、今回が「おひさま」(2011年)、「あまちゃん」(13年)に続く3度目の朝ドラ出演で、大河ドラマ「龍馬伝」(10年)や「軍師官兵衛」(14年)でも重要な役どころを務め、昨年は土曜ドラマ「64(ロクヨン)」に主演するなど、今や“NHK御用達”の名優だ。平岩さんも「心も体もでかくて、器も大きいし、めちゃくちゃ優しいですね」と表現すると、「スタッフやキャスト、みんなのことを見てくれていて、違和感があったら意見をまとめて監督に伝えてくれたり、全員がやりやすいよう芝居を作ってくれる、リーダー的存在。それが自然で、大きな優しさが根底にあるから、いろいろなことに気づけるんだろうなって思いました」と感心する。

 一人の役者としても「自然体なんですけど、ちゃんと考えていらっしゃる」といい、「実は普段、音楽をやっている人の演技にすごく興味あって。役者同士の間ってキャッチボールのようなリズムやメソッドがあって、決まっている部分があるんですけれど、音楽をやっている人ってそこをいい意味で乱してくれる。楽譜みたいに、いきなり“ピョンっ”て違う音符に行ったりするのがすごく面白くて。瀧さんはずっと役者をやられているから、メソッドを分かった上で、自由な部分があって、すごくカッコいいなって思いますね」とベタぼれの様子だった。

 ◇忌野清志郎さんの“一言”で「この先、50年はできるなって」

 そんな平岩さんに、以前に瀧さんと同じ感動を与えたのが、09年に亡くなったロックミュージシャンの忌野清志郎さんだ。平岩さんとは03年放送のドラマ「マンハッタンラブストーリー」や04年公開の映画「恋の門」と同じ作品に出演。同一シーンを演じることはなかったものの、忌野さんの独特のリズムを持った演技から「こういう球を投げるんだ」と強い印象を受けたという。

 平岩さんは「忌野さんとはお互いに『同じ作品に出ているな』って分かってはいて。それで忌野さんが『恋の門』のスチールを見ながら私を指差して『この子、好きなんだよ』っておっしゃっていたのを人から教えてもらっって。その一言で『この先、50年はできるな』って(笑い)、(自身の)ガソリンになりましたね。大好きな方に知ってもらえて、そう思ってもらっている。すごいうれしいことで、今でもたまに思い出して、元気をもらっていますね」とうれしそうに振り返っていた。

 また平岩さんは「柔軟に対応したいし、監督の言うことを聞きながらも、どこか自分の、平岩紙としてのスパイスを効かせていたいっていうのは昔からある。作品に出させてもらっている意味を、なんとなく残せたらな」と女優としてのこだわりを明かす。「体験したことのない年齢を演じるのが一番難しくて。今はすごく背伸びをしている状態で、それを見せたくないっていうのもありますね。あと、年を取っていくと監督に怒られなくなるから若いうちに怒られなさいってよく聞くんですけど、中堅くらいになって本当にあまり言われなくなってきたから、ヤバイヤバイって(笑い)。だからもっとしっかりしなくちゃなって」と気を引き締めていた。

 「とと姉ちゃん」はNHK総合で月~土曜午前8時ほかで放送。

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