村上虹郎:「人間的に卑屈ではない」コンプレックス抱える主人公に共感 「Hulu」オリジナルドラマ「息をひそめて」撮影秘話語る

動画配信サービス「Hulu」のオリジナルドラマ「息をひそめて」の第3話「君が去って、世界は様変わりした」に出演する村上虹郎さん
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動画配信サービス「Hulu」のオリジナルドラマ「息をひそめて」の第3話「君が去って、世界は様変わりした」に出演する村上虹郎さん

 オンライン動画配信サービス「Hulu(フールー)」で4月23日から独占配信されたオリジナルドラマ「息をひそめて」に出演する俳優の村上虹郎さん。ドラマは1話完結のオムニバス形式で、村上さんが演じるのは第3話「君が去って、世界は様変わりした」の主人公で、ゴミ収集業に従事している宮下心平。学歴や育ちにコンプレックスがあり、卑屈な言動で彼女に愛想を尽かされる役どころだが、村上さんは「卑屈的思考は持っているんですけど、人間的に卑屈ではない」といい、共感を覚える部分があったという。村上さんに演じた役への思いや撮影エピソード、配信ドラマに抱く思いなどを聞いた。

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 ◇安達祐実は「ミステリアス」な存在?

 「息をひそめて」は映画「四月の永い夢」(2014年)で知られる中川龍太郎監督と、映画「そこのみにて光輝く」の脚本を手がけた高田亮さんによるオリジナル作品。コロナ禍の2020年、東京・多摩川沿いに暮らす人々のささやかな日常を描く。第3話は、線路近くの古いアパートに住む心平が主人公。ゴミ収集業に従事する心平は、約3年間交際した大学生の琴波(横田真悠さん)にふられ、まだ傷がいえない中、マッチングアプリで「琴子」という女性と会う。琴子と名乗る松崎妃美(安達祐実さん)は美しく裕福そうだったが手首にはうっすら傷痕があった。2人はお互いの本名も知らないまま、体を重ねるが……というストーリー。

 ドラマで描かれるのは、どこにでもいるありふれた人々の日常だ。コロナ禍の東京を舞台に、過激な事件が起こるわけではないが、日々のささやかな営みの中での細かい感情の動きが丁寧に描かれる。村上さんも「過激で分かりやすいことではない魅力があって……。(中川監督は)なんてことないところにある、なんてことないわけではないところを、たくさん見つける方。人の営みの中にある感情の動きがすごく丁寧に描かれていると思いました」と今作の魅力を語る。

 演じる心平は際立った特徴があるわけではない、平凡な24歳だ。学歴や育ちにコンプレックスを抱いており、ときに卑屈な言動もみせるが、本質的には暗い人間ではない、と村上さんは捉えており、「(演じるうえで)背伸びも小さくもしていない。自分とそんなに遠くないかな、と思います」と共感する。「元カノの琴波は、裕福な家に生まれていい大学に入って……と社会的に“持っている”側の人間。でも心平は真逆で、ほとんどのものを持っていない。ただ、卑屈さはそういう(違いを自覚する)瞬間に出るだけで、基本的には暗い人間ではない。そこは僕と遠くないな、と。『卑屈的な思考』は持っているんですけど、人間的に卑屈ではない」と自身と重ねて語る。

 琴波と言い争うシーンでは、卑屈な言葉を発したことで愛想を尽かされる。「やっていても、嫌な気持ちになりましたね」と苦笑いで振り返る村上さん。「自分では言ったつもりはなくてもいつの間にか言っていることって、確かにあるなって。自分が気づいてないところで、自分の言葉で相手がものすごく傷ついていることってあるなと思いました」とうなずく。同シーンでは実は台本にないせりふも含まれており、「監督から、『せりふを好きに足してくれ』と言われて。といっても相手のリアクションもせりふも台本にあるので、簡単ではなかったです。そういう演出を撮影初日からぶっこまれました(笑い)」と楽しそうに振り返る。

 琴波が去ったあと、心平がマッチングアプリで出会い、関係を持つのが“琴子”を名乗る妃美。そんな妃美を演じる安達さんについて「ミステリアスな方」と村上さん。「お会いする前に調べたら、小さいころの画像とか出てくるんですが、いい意味で変わっていない、というか……。僕も一般的な基準よりも仕事をし始めた時期は早いけれど、その比じゃないですし、今よりももっと芸能人が芸能人っぽかった時代で、生活の制限のされ方や重圧も違うし、それは僕には想像しえないレベル。圧倒的な経験値があって、すごく興味深いです」と安達さんの印象を明かす。

 ◇単館の“映画っぽさ”が好き 

 今作はオンライン動画配信サービス「Hulu」で配信される。映画やテレビドラマとは異なる見られ方になるが、演じている身としては、現場ではあまり違いは感じなかった、と村上さんはいう。「監督は映画の方ですし、大きくは変わらなかったです」。ただ、以前に「Netflix」で配信された「今際(いまわ)の国のアリス」に出演した経験から、「反響が全然違います。(SNSの)フォロワーが2.5倍ぐらいになりましたし……『Hulu』もおそらくそうで、(違いは)配信されてから分かるのだと思います」とみている。

 実はコロナ禍の自粛中、つい途中で止めてしまうなど、家で映画が見られなくなったといい、配信ドラマばかり見ていたという。配信という形について村上さんは「圧倒的に、見やすい」とアクセスのしやすさを魅力に挙げ、「ドラマは、話の運び方が見やすいんですよね。見ている側にやさしいというか、距離感が圧倒的に見ている側に親身になっているんです」と説明。今作についても「この作品がやさしいかというと……“映画的”だし、エンタメ要素の観点で言えば難易度が高いかもしれないですが、今までの中川さんの映画に比べると、見やすい方だと思います」と話す。

 そんな“映画的”な今作を「すごく好き」だという村上さん。「(俳優として)単館の映画から出てきている部分もあって……。単館の“映画っぽさ”が好きで、邦画の世界にいる部分もあります」と思いを語る。中川監督とは俳優と監督として、10代のころからの付き合いという村上さんは、最後に、今作について「キャストの空気感、演出も含めて、中川さんっぽいな、と。今回はカメラマンさんがPVやCMをがっつり撮っている方なので、画(え)が中川さんっぽいかというと分からないですが、僕はすごく好きでした。監督らしさと、監督の新しい挑戦を感じました」と本作への思いを語ってくれた。

 「息をひそめて」は4月23日から一挙独占配信中。全8話。

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