有村架純:改めて気づいた「演じること」の楽しさ 「このまま芝居をやっていていいんだろうか」と悩んだ時期も… 主演ドラマ「前科者」で保護司役

「WOWOWオリジナルドラマ 前科者 -新米保護司・阿川佳代-」で主人公の阿川佳代を演じる有村架純さん
1 / 7
「WOWOWオリジナルドラマ 前科者 -新米保護司・阿川佳代-」で主人公の阿川佳代を演じる有村架純さん

 数々の映画、ドラマで主演を務めるなど活躍中の有村架純さん。11月20日に放送・配信がスタートするWOWOWのドラマ「WOWOWオリジナルドラマ 前科者 -新米保護司・阿川佳代-」では、さまざまな“前科者”と出会い成長していく新人の保護司役に挑戦。1年前、撮影に入るまでは「このまま芝居をやっていていいんだろうか」と女優業に悩んでいた時期もあったというが、今作の撮影を経て、改めて「演じることの楽しさ」に気づいたという。そんな有村さんに今作や女優業への思いなどを聞いた。

あなたにオススメ

 ◇「こんなに魂が震えることってあるのかな」

 ドラマは、2018年から「ビッグコミックオリジナル」(小学館)で連載中の香川まさひとさん原作、月島冬二さん作画の同名マンガが原作。罪を犯した“前科者(保護観察対象者)”の更生、社会復帰を目指し奮闘する保護司を描く社会派ヒューマンドラマで、ドラマでは、原作を基に佳代が新人保護司としてさまざまな人々と出会い、成長していく姿を映し出す。22年1月には映画「前科者」も公開予定で、ドラマの数年後を舞台に、保護司の佳代が現在進行形の凶悪犯罪と向き合う様を描く。「あゝ、荒野」などの岸善幸さんが監督と脚本を務める。

 今作の撮影を終え、「『こんなに魂が震えることってあるのかな』と思ったぐらい、毎日心が揺さぶられている感覚がありました」と感慨深い表情で振り返る有村さん。「その揺さぶられている感覚から湧き上がってくるものを全力で出そうと、撮影に臨んでいました」と役に挑んだ思いを語る。

 新米保護司の佳代は、メガネをかけた地味な外見の女性。一見物静かだが芯は強く、物おじしない一面もある。有村さんはそんな佳代の役作りについて「マンガから感じるインスピレーションやテンション、トーン、温度感などをなるべく繊細に感じ取れるように、何回も読んで。ただ、何かひとつキャラクターっぽさも欲しかったので、しゃべり方を少し無機質な感じを意識して挑みました。トーンは、抑揚がないようにも感じられたり、でもみどり(石橋静河さん)とは普通にしゃべっていたり、人によって距離感をとりながら佳代のいろんな一面を見せられるようにと思っていました」と明かす。
 
 佳代は、信念に反することに対しては突然怒りをむき出しにするなど、熱い一面も持ち合わせている。「映画でも突然怒って、傘で窓を割ったりするんです(笑い)。ただ、そういうことはあまり深く考えずに演じようと思っていました。叫んだり、『くそがー!』と言ったりするんですけど、そういうところも(心が)震えるものから出るように努めました」と振り返る。ドラマでは、鼻血を出して走るひたむきな姿もみせており、有村さんは「私、(ほかの作品でも)雨に打たれたり、泥まみれになったり、血がついていたりするので『やっぱりこういう役回りなんだな』と思いました」と笑う。

 そんな撮影の日々も「毎日楽しかった」と充実感をにじませる有村さん。ただ、保護司という役ならではの苦しさもあった。「人のことを思って怒ったり泣いたりすることが多く、演じながら『人に心を動かされることはとてもすばらしいことだな』と思ってましたが、どうしようもない状況が目の前に立ちはだかるので、それはとにかくつらかったです。映画版ではラーメンを食べながら泣く芝居があるんですが、ずっと涙が止まらなくて。森田剛さん演じる工藤誠を思いながら涙するシーンですが、本当にしんどかったです。何か得体のしれない感情が自分の中にあって……苦しかったですね」としみじみ語る。

 ドラマには“前科者”として石橋さん、大東駿介さん、古川琴音さんが出演する。こうした共演者について、有村さんは「作品に対して熱量を注いでくれる方ばかり。相乗効果で、自分もより引き出していただいた部分がありました」と感謝する。特に石橋さん演じるみどりとは共演シーンが多く、「彼女に出会えてすごくよかったと思っていて……役者としても女性としてもリスペクトしていますし『いいコンビができたな』と思います」と手応えを感じられた。撮影後も常に連絡をとる仲になったといい、「一度おうちに行って、遊ばせてもらいました」と笑う。

 ◇実は不安症な一面も 「いつもネガティブです」

 有村さんは現在28歳。20代ではラブストーリーをはじめ、数々の作品で主演やヒロインを務めてきた。残り1年少々となった20代を改めて振り返ってもらうと、仕事に関しては「やり残したことはなさそうなんですよね。20代では、ラブストーリーもたくさんやらせていただきましたし……」と充実した20代だったようだ。ただ、まだ今作の撮影が始まっていない1年前の今ごろは、女優の仕事に「自信をなくすような感覚」もあり、悩んでいた時期だったという。

 「『このまま芝居をやっていていいんだろうか』とか『できないかもしれない』と思っていて……。いただいた作品に対して『できないかもって思うからこそ、挑戦しがいがあるんじゃん』とは思うんですが、そこまで行き着けないぐらい、無理です、となっていたんです。『今の自分では、このハードルは超えられないかもしれない』と悩んでいました」

 ただ、そうした仕事へのネガティブな思いを払拭(ふっしょく)するきっかけになったのが、今作の撮影だったという。現場はいつもより集中力が必要とされるような臨場感があり、毎日“ゾーンに入る”感覚だった。「自分が撮られていると思ったら、急に相手の方に(カメラを)振るとか、臨場感のある現場で、集中力が必要だったんです。でも、“ゾーン”に入る感覚が毎日あって、すごいことだな、と感じて……なかなかこういう味わいができる現場はないぞと思いました」と得るものは多かったようだ。

 そんな撮影を経て、演じる楽しさに改めて気がついた。「すごくシンプルに、『演じることってやっぱり楽しいな』と思ったんですよね。この『前科者』をドラマも映画も演じてみて、やっぱり演じることが好きだな、と再確認できました。それは、自分の中ではとっても大きな出来事で……。みんながひとつの方向に向かって作品を作る幸せを改めて感じることができて『この感覚、絶対忘れないようにしよう』と思いました」としみじみと振り返る。

 実は「すごい不安症。いつもネガティブですね」という有村さん。「常に『これが正解なんだろうか』と、考えたって意味ないのに、考えてしまうんですよね。芝居に正解はないし、正解なんだろうかと考えることが無駄なんですけど……今回撮影していても考えていましたね。監督が『よかったですよ』と言ってくださっても、まだ疑っている自分がいて……。それはどの作品でも、常にそうですね」と吐露するが、ただ「でも『(この役を)やりたい、やってみたい!』と思うときは、不安はないんです」と笑う。

 今作で保護司を演じたように、今はあえてラブストーリー以外の作品へ挑戦している。「今は、ラブストーリーじゃない方向の作品を選ばせていただいているんです。そっちの方向性も挑戦してみたいな、と思って。あまり“ザ・職業モノ”な作品を演じたことがなかったので、27歳から30歳までの3年間は、20代に合う職業モノを、と。30代になったら、また違うラブストーリーがあると思いますから。方向性は、考えて演じています」

 そんな有村さんに、最後に演じてみたい職業を聞くと、「役者のみなさんが悩まれるであろう、三大職業。弁護士、医者、刑事。経験として通った方がいいと思うので、やってみたい。苦労はするでしょうけれど」と笑顔を浮かべる有村さん。さらなる挑戦を続ける有村さんに今後も注目が集まりそうだ。

 ドラマは、11月20日から毎週土曜午後10時半にWOWOWで放送、配信される。全6話で構成され、第1話は無料放送。WOWOWオンデマンド、動画配信サービス「Amazon Prime Video」で見逃し配信もされる。

 ※スタイリスト:瀬川結美子 ヘアメーク:尾曲いずみ

写真を見る全 7 枚

テレビ 最新記事