舞いあがれ!:クセ強キャラ“リュー北條”とは グッジョブ連発の優秀な短歌編集者

NHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第93回の一場面(C)NHK
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NHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第93回の一場面(C)NHK

 福原遥さん主演のNHKの連続テレビ小説(朝ドラ)「舞いあがれ!」(総合、月~土曜午前8時ほか)。第20週(2月13~17日)では幼なじみの関係だった舞(福原さん)と貴司(赤楚衛二さん)が互いに思いを伝え合い、結ばれるまでが描かれた。あと一歩が踏み出せなかった2人の背中を押したのは、貴司の短歌のファン、史子(八木莉可子さん)と担当編集者のリュー北條(川島潤哉さん)だ。特に北條は、初めて登場した際はうさんくさい雰囲気をまとっていたが、貴司の才能を見込み、殻を破ろうとする情熱的な人物だと分かり、視聴者の人気もうなぎ登りだ。クセの強い北條という人物について、同作の制作統括・熊野律時(くまの・のりとき)さんの言葉をもとにひもといた。

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 ◇登場シーンは「雰囲気も名前も全部怪しすぎ」

 北條は、第83回(1月31日放送)で初登場すると、スマートフォンで貴司を撮影し、「顔が大事よ」と言い放ち困惑させる。SNSでは「雰囲気も名前も全部怪しすぎ」と視聴者から受け止められた。

 だが第20週に入って、貴司の第一歌集を出版するために10首追加を要求し、上がってきたものが地味だと、即座にダメ出し。「ちゃんと大勢に伝わる歌を書いてよ。短歌を作るってことは、自分の中の本当の気持ちを差し出すってことでしょ」と貴司が自分の殻を破るように促す。

 そのあとも貴司が「怖いんです。心の奥をさらけ出すの。昔から、人とぶつかんのが怖くて……」と本音をもらすと、北條は「もったいないよね! 梅津さん、せっかくのマグマに蓋(ふた)しちゃって!」と厳しい口調で叱咤(しった)し、酒に酔った状態で「デラシネ」に再び姿を現すと、「いるんでしょ、大切な人がさ。その人の心に向かって、ど真ん中、ストレート、投げるつもりで書けよ!」を強く訴えた。

 視聴者は「ちゃんとした編集者だった」「貴司の深層心理を見抜いていた北條さん。本当は情熱的な人」と貴司の成長を促すグッジョブ連発に評価はぐんぐんアップした。

 ◇実は短歌を愛する熱い編集者

 熊野さんは、「脚本の桑原亮子さんが北條というキャラクターをすごく面白がって書いていただいた」といい、北條は「短歌の編集者として短歌を愛している。いいものを世に出したいという気持ちがちゃんとある。そして貴司の歌人としての才能を見込んでいる」ことが根底にあるユニークなキャラクターに設定した。

 登場した当初は見た目もうさんくさく、史子いわく“俗物”に見え、「貴司を食い物にするんじゃないか」と心配する視聴者の声も多かった。

 熊野さんは「第一印象はうさんくさいけれど、貴司の才能をちゃんと世の中の人に知ってほしい、この素晴らしい短歌を一人でも多くの人に味わってほしいという思いがある」と北條を表現する。

 大部数など見込めない、知る人ぞ知る存在の短歌の歌集をもっと広く知ってほしいと、「貴司が男前なら写真でもなんでも載せた方がいいと思うし、あらゆる手を尽くして、世の中の少しでも多くの人の目に触れるような形にしたいという思いを持っている」“熱くて優秀な編集者”だと評価する。

 ◇「おちょやん」ではクセ強な映画監督役

 演じる川島さんは、1979年5月12日生まれ、東京都出身の43歳。これまで朝ドラには「純と愛」(2012年後期)、「なつぞら」(2019年前期)、「エール」(2020年前期)、「おちょやん」(2020年後期)など今作も含めて6作に出演。2022年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では朝廷との交渉役を担った幕府の外交官・中原親能を演じた。

 熊野さんは、川島さんについて「『おちょやん』のときに、ジョージ本田というクセの強い映画監督の役でご出演いただいたことがあったので、今回もリュー北條を面白くやっていただけるに違いないと思ってお願いしました」と起用理由を説明し、「ものすごくユニークなキャラクターとして、より深めていただいたので、よかったなと思っています」と喜ぶ。

 北條は、第96回(2月17日放送)で昼間から酒に酔った状態で「デラシネ」に現れる。熊野さんは「貴司の新しい短歌が欲しい。それを自分が引き出せていないという思いから、酒を飲んで、酔った勢いで背中を押しに来たのかな」と説明するが、情熱だけでない、北條のトラウマや闇のようなものも感じるが……。「それは想像にお任せします」と話すにとどめた。

 20日から始まる第21週では、舞と貴司の思いが通じ合い、新たな一歩を踏み出す。北條の手腕で貴司が歌人としてどんなふうに舞い上がっていくのか、見届けたい。

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