らんまん:「継承」が随所に描かれた最終週 称賛の声が相次いだ“長田マジック”

NHK連続テレビ小説「らんまん」の一場面(C)NHK
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NHK連続テレビ小説「らんまん」の一場面(C)NHK

 神木隆之介さんが主演するNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「らんまん」(総合、月~土曜午前8時ほか)の最終回が、9月29日に放送され、半年間におよぶ物語が終わりを迎えた。最終週(9月25~29日)では、脚本を担当した長田育恵さんが過去のインタビューで語っていたテーマ「継承」が、随所に散りばめられた展開となった。

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 ◇“胸熱だった”波多野の説得シーン

 長田さんは「最終週は万太郎(神木さん)の人生の開花の時期が終わり、次の世代に、どう実を残していけるかという話になります」と語っていた。その言葉通り、万太郎が植物図鑑や標本を後の世に残すシーンが登場した一方で、脇を固めるキャラクターたちの「継承」も描かれた。

 第128回(9月27日放送)で、“最も優秀な頭脳60人”に与えられる「帝国学士院会員」に選出された波多野(前原滉さん)が、その称号を受けた責任として、学問を後世に伝えていくことの大切さを語った姿も、これにあてはまるだろう。

 理学博士の話を受けるかどうか悩んでいた万太郎のことを「傲慢」だと指摘した上で、説得を試みた波多野。

 かつて野宮(亀田佳明さん)と共に「世紀の大発見」をした経験を踏まえ、「何でその役目が僕らだったのかは分からない。けど僕は、引き受けることにした。称賛と引き換えに学問に貢献する立場と義務を! 理学博士になるんだ、槙野万太郎!」と語る波多野に、「胸熱だった」「いつだって熱い言葉を投げかけてくれる」と視聴者の関心が集まったことは改めて言うまでもない。

 ◇ただの再登場ではなかった佑一郎と丈之助

 第129回(9月28日)では、「もう登場しないかも」と言われていた佑一郎(中村蒼さん)、長屋卒業以来の出番となった丈之助が再登場したが、2人の言動からも「継承」が見え隠れした。

 理学博士になった万太郎のお祝いに駆けつけた佑一郎は、震災復興のため、隅田川に橋をかける事業を手掛けてきたが、教え子らが“しっかりと育ってきた”ことを理由に、仕事を引退することを告白したが、これも一つの「継承」と言えるだろう。

 一方、丈之助は「演劇の博物館を作りたい」と明かすと、「俺の教授としての退職金、それから、俺が死んだら自宅と敷地、財産は全部早稲田に寄贈する! あと、これから出す文学全集印税の受取人も早稲田にする」と宣言。「せめて、できる限りのものを後の世に送りたいなって」と口にするなど、植物だけでなく文明や文化の面でも確かに「継承」が行われていることが描かれた。

 ◇粋なサプライズ? 語りの宮崎あおいが「継承」のお手伝い

 そんな最終週で象徴的だったのが、万太郎の功績の「継承」を手伝うために登場した新キャラクター・藤平紀子の存在だ。演じたのは、ドラマの語りを務めてきた宮崎あおいさんで、最終週の初回となる第126回(9月25日放送)にサプライズ登場して視聴者を驚かせた。

 第126回で、万太郎と寿恵子(浜辺美波さん)亡き後の昭和33(1958)年の夏、万太郎の遺品整理のアルバイトの面接で槙野邸へとやってきた紀子。応対したのは末娘の千鶴で、万太郎の祖母・タキを演じた松坂慶子さんが“61歳になった千鶴”に扮(ふん)した。

 最初は「こんな重大な仕事、とても……」と、アルバイトの断りを入れた紀子。しかし、千鶴の元へと引き返してくると「この標本……守ってきたってことですよね? 関東大震災、それから空襲も。東京大空襲……私、17でした。覚えています。どんなに恐ろしかったか。あの地獄の中、炎の中をご家族の皆さんが、これだけの量を守り抜いてきたってことですよね?」と尋ねる。

 すると千鶴は、万太郎や寿恵子が関東大震災時に必死に標本を守り、万太郎が「これは残すもんじゃ! この先の世に残すもんじゃ!」と訴えた場面を思い出す。

 紀子は「それを考えたら……私、帰れません。私も戦争を生き抜きました。次の方に渡すお手伝い、私もしなくちゃ」と覚悟を決め……と展開した。

 長田さんの言葉通り、見事に「継承」が描かれた最終週。視聴者の間からは“長田マジック”というワードも飛び出し、称賛の声が相次いだ。最後までサプライズやワクワクを提供し続けてくれた脚本に最大限の敬意を払いたい。

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