市原隼人:芝居とは「腐れ縁のような関係」 「おいしい給食」新作でもブレない“振り切れ具合” 「とにかく笑われようと」

ドラマ「おいしい給食 season3」で主演を務める市原隼人さん
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ドラマ「おいしい給食 season3」で主演を務める市原隼人さん

 人気“学園グルメ”コメディー「おいしい給食」で、主演を務めてきた市原隼人さん。10月からテレビ神奈川、TOKYO MX、BS12 トゥエルビほかで放送される新作ドラマ「おいしい給食 season3」でも、学校給食をこよなく愛する主人公・甘利田幸男に扮(ふん)し、ブレない振り切った演技を披露している。「常に“笑われる人物”でありたいと思って演じています」と、甘利田役への思いを明かす市原さんに話を聞いた。

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 ◇笑わせるのではなく、笑われる

 「おいしい給食」は、1980年代のある中学校を舞台に、給食マニアの教師・甘利田と彼を取り巻く生徒たちの人間模様を描く。2019、2021年にテレビドラマが放送され、「劇場版 おいしい給食 Final Battle」(2020年)、「劇場版 おいしい給食 卒業」(2022年)の映画2本も製作された。

 “season3”は、「劇場版 おいしい給食 卒業」のラストで、函館への転勤が決まった甘利田が、北の地オリジナルの献立や食材に囲まれながら、新たなる給食道を突き進む……というストーリーが展開する。市原さんは「この作品のファンになってくださった皆様に恩返しをしたいという一心で、現場に立っていました」と振り返る。

 今回も大好きな給食をめぐって、新たなライバルとなる男子生徒・粒来ケン(田澤泰粋さん)と火花を(勝手に)散らす甘利田だが、市原さんは「ある意味、甘利田は僕の憧れでもあります」と語る。

 「誰かに笑われても、滑稽な姿をさらしても、好きなものは好きと胸を張って言える。相手が子供だとしても、負けたら、素直に負けを認めることができる人間力も持っている。一生懸命、人生を謳歌しようとする甘利田が僕は大好きなんです」

 そんな甘利田を、振り切って、楽しんで演じているように見える市原さん。その裏には「とにかく笑われようと。笑わせるのではなく、笑われる人物でありたい」という強い思いがあった。

 「チャップリンがいうように、近くで見ると悲劇だけど、俯瞰(ふかん)で見ると人生は喜劇だと。甘利田はまさにその通りのキャラクターなので、劇中で起こる悲劇に振り回されることを意識しました。その振り回され方も妥協なく、何があっても迷うことなく、常にハプニングを求めて、あと先考えない芝居というものを念頭において、演じました」

 撮影中は、甘利田に“取りつかれている”と思うこともしばしば。また「甘利田になると、どこまでもできてしまうんです」と、振り切った演技の理由を明かす市原さんは、「1作目の時から監督にお願いしていたのですが、『使われなくてもいいので、いろいろなことに挑戦させてください』と。そのまま今に至る感じです」と語った。

 ◇一世一代の芝居をしてみたい

 そんな市原さんだが、「おいしい給食」において「一番の主役は子供たち」という思いを抱く。

 「撮影に入る前に子供たちには、なぜ皆さんが生徒役に選ばれて、誰のためにこの作品を作るのか。その存在意義を一人一人見いだしながら、みんなで共闘して作っていきましょうという話をしてから現場に入りました。本当に僕は子供が大好きで、キラキラとした真っすぐな目で見られると、底なしの力が湧いてきますし、そんな子供たちと、函館ならではの食に囲まれながら、無事に撮り終えることができた今、視聴者の皆様にどんなふうに受け取っていただけるか、楽しみでしかたありません」

 改めて「おいしい給食」について、「老若男女全ての方に楽しんでいただける純粋なエンターテインメント作品です。ただのコメディーではないですし、いろいろなメッセージが込められています」と話す市原さん。自身は「純粋に役と作品に向き合っているだけ」というが、俳優キャリアにおける代表作の一つとなっていることは間違いないだろう。

 “今後”について話を向けると、市原さんからは「一世一代の芝居をしてみたいです。肉体も精神も捧げられるような、そういう芝居に出会いたいです」との答えが返ってきた。

 「それがどういうものなのか、まだ自分の中で答えは出ていないのですが。芝居というものは、本当に好きなんだけど嫌いで、嫌いなんだけど好きという、“腐れ縁のような関係”。そんな僕の芝居を見て『親子の話すきっかけになりました』とか、『生きる希望が出てきました』とか言ってくださる方がいる。そういったいろいろな声を聞いて、うれしくて涙が止まらなくなったこともありましたし、それからはさらに真剣に役や作品に対して責任感を持たなくてはいけないと実感しました。見てくださる方の胸に一生残るようなワンシーンを作ってみたいというのが、今の夢です」

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