注目映画紹介:「スポットライト 世紀のスクープ」 全米を震撼させたスキャンダル暴露記事の内幕

「スポットライト 世紀のスクープ」のワンシーン Photo by Kerry Hayes(C)2015 SPOTLIGHT FILM,LLC
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「スポットライト 世紀のスクープ」のワンシーン Photo by Kerry Hayes(C)2015 SPOTLIGHT FILM,LLC

 第88回米アカデミー賞で、作品賞と脚本賞に輝いた「スポットライト 世紀のスクープ」(トム・マッカーシー監督)が15日から公開される。2002年1月、米国の新聞「ボストン・グローブ」がすっぱ抜いた、神父による児童への性的虐待と、それを組織ぐるみで隠ぺいしてきたカトリック教会のおぞましい関係。映画は、その暴露記事掲載に至るまでの記者たちのたゆまぬ努力を克明に描いていく。

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 2001年7月、米国の新聞社「ボストン・グローブ」に、新たな編集局長としてマーティ・バロン(リーブ・シュレイバーさん)が着任した。彼は部下たちに、カトリック教会が全面否定している地元ボストンの神父による児童への性的虐待事件を詳しく探るよう指示を出す。担当を命じられた特集記事欄「スポットライト」のチーム、ウォルター“ロビー”ロビンソン(マイケル・キートンさん)、マイク・レゼンデス(マーク・ラファロさん)、サーシャ・ファイファー(レイチェル・マクアダムスさん)、マット・キャロル(ブライアン・ダーシー・ジェームズさん)の4人は早速調査を開始するが、地道な取材を続ける中で、驚くべき事実が次々と明らかになっていく……というストーリー。

 とにかく面白かった。映画が始まってすぐにスクリーンに引き込まれた。新たな編集局長の掛け声で、記者たち4人は事件の被害者や弁護士らへの取材を重ねていく。教会の公式年鑑をあさり情報をたぐり寄せ、そこで得たことの裏を取るため、再び関係者への取材を試みる……。4人が記者魂を発揮し、真相を究明していく過程の、スリリングなことといったらない。そのスリル感が、児童への性的虐待や巨大組織による隠ぺい工作、さらに、それに切り込むジャーナリストの正義と矜持といった重いテーマとのバランスを取り、今作を娯楽性にも富んだ優れた作品たらしめている。記者たちそれぞれに光が当たり、見せ場を作ってあることも特筆すべき点だ。記者を演じたラファロさんとマクアダムスさんは、それぞれ、アカデミー賞で助演男優賞と助演女優賞にノミネートされていたが、個人的には、彼らをまとめたバロンが、出番は少ないながらキーパーソンだと思っている。演じたシュレイバーさんがいい味を出していた。15日からTOHOシネマズ日劇(東京都千代田区)ほか全国で公開。(りんたいこ/フリーライター)

 <プロフィル>

 りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションを経てフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。

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