女優の有村架純さんが主演する映画「コーヒーが冷めないうちに」(塚原あゆ子監督)が、21日からTOHOシネマズ日比谷(東京都千代田区)ほかで公開される。過去に戻れる不思議な席のある喫茶店を舞台に、客の人間模様が描かれる。タイムスリップというファンタジックな素材を扱ってはいるが、誰もが何かしら共感でき、じんわりと心温まる作品に仕上がっている。
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時田数(有村さん)が、店主でいとこの時田流(深水元基さん)と切り盛りする喫茶店には、望んだ時間に戻れる不思議な席があった。うわさを聞きつけて来店した女性客(波瑠さん)は、渡米した幼なじみ(林遣都さん)の真意を確かめるために、過去に戻りたいという。しかしその席には、いつも女性客(石田ゆり子さん)が座っていて……というストーリー。ほかに、若年性アルツハイマーに侵された女(薬師丸ひろ子さん)とその夫(松重豊さん)、スナックを営む女性(吉田羊さん)とその妹(松本若菜さん)、喫茶店の常連客で、次第に数に引かれていく大学生(伊藤健太郎さん)といった客が登場。彼らの悲喜こもごもが描かれていく。
舞台の脚本家・演出家として活躍する川口俊和さんの同名小説と、その続編「この嘘がばれないうちに」が原作。劇場版アニメ「サマーウォーズ」(2009年)や、映画「八日目の蝉」(11年)などで知られる奥寺佐渡子さんが脚本を担当し、「重版出来!」や「リバース」「アンナチュラル」(いずれもTBS系)といったテレビドラマを演出してきた塚原監督が映像化した。
恋人、夫婦、姉妹など、それぞれの関係に焦点を当てたエピソードが展開していく。各エピソードで感動のポイントは異なる。個人的に身につまされたのは、薬師丸さんと松重さんの物語。夫が妻を「大丈夫だから」と励ます場面は、松重さんの笑顔がすてき過ぎて、涙がとめどなく流れた。作り込まれた喫茶店のセットにも魅了された。興味深かったのは、タイムスリップの瞬間だ。舞台が喫茶店ということで、コーヒーや湯気などから塚原監督が連想したというその演出は、幻想的でありながら現実感もあり、感服させられた。(りんたいこ/フリーライター)
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