モンスター
#10 信じた者たちへ
12月16日(月)放送分
放送中の連続ドラマ「ナンバMG5(エムジーファイブ)」(フジテレビ系、水曜午後10時)で、間宮祥太朗さん演じる主人公・剛の愛犬・松の声が「良すぎる」と話題になっている。それもそのはず、松を演じているのは人気声優の津田健次郎さん。愛くるしい見た目の一方、ヤンキー魂を持った松の心の声を豊かに表現し、視聴者を楽しませている。実写での犬役はキャリア史上初めてという津田さんは「自分でもいかつめの声だという自覚はあるので、『こんなに可愛い子の声をやらせていただけるんですか?』と本当にびっくりしました」と告白。自身も松にメロメロという津田さんが、役作りの秘訣(ひけつ)や、ドラマにちなんで自身の高校時代を語った。
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原作は小沢としおさんのマンガ「ナンバMG5」「ナンバデッドエンド」(共に秋田書店)。ヤンキー一家に生まれた剛(間宮さん)が内緒で健全な高校に入学し、家族の前ではヤンキー、学校では真面目な高校生という「二重生活」をするドタバタを描く。松は、子犬の時に捨てられた窮地を剛に救ってもらい、剛への恩義を忘れず「アニキ」と慕っている難破家の柴犬。愛くるしい見た目とはギャップのある渋い声をしており、第1話放送時はまだキャストが未発表だったこともあり、SNS上では「松が可愛い」という声と共に、「松の声が良すぎる」「津田健次郎さんでは?」と大きな話題になった。
「1話のオンエアがあった後、『あれ、津田くんだよね』とよく言われていました。1話の時点で正直バレていた。でも情報解禁されていないので、『どうでしょう』とごまかしていたんです」と苦笑いを見せた津田さん。解禁後は「アニメの現場のスタッフさんも『見ているよ、面白いね』『松、かわいいねぇ』とニコニコしながら言ってくださる。ありがたいですね」と周囲からの反響を喜ぶ。
実写での動物役は、津田さんのキャリア史上初とのこと。犬役のオファーに、「『え、犬ですか?』って。本当にびっくりしましたし、ものすごく面白い試みだと思いました」とにっこり。犬の声というと「まず北大路欣也さん(ソフトバンクのCMのお父さん犬役)を思い浮かべました」と笑いながら「レアな体験をさせていただいています」とコメント。「台本に書かれている以上に、かなりセリフは増えています。倍くらいある気がします」と秘話を明かす。
現場では演出を務める本広克行監督と相談しながら、松を作り上げているという。「監督と場面、場面で『ここでは、松的にはこういう感じのことを言っていきたい』『こういう気持ちが見えるといいかな』といったことなどを事前にお話をさせていただいて、1回テストでやってみる。細かいことというよりも、シーンの大きな流れをお伝えいただく感じで。監督がおおらかで優しい方で、ものすごく褒めてくれるんです。『津田さん、面白いですよ』と言ってくださるので、気分良くやらせていただいています」と明かす。乗りに乗ってアドリブを付け加えているというが、「台本に書かれているセリフは脚本家さんが一生懸命に作り上げてくださっている言葉なので、そこは大事にすべきだろうと。その間を作っていく感じです」と説明する。
例えばお酒を飲んでいる相手と対峙した松が「酒クサ」と発したセリフも台本にはなかったといい、「顔が近づいたなと思って、(相手は)すごく飲んでいるし、酒臭いだろうなと。松は鼻がいいので強烈だったんじゃないかなと画面を通して感じたので、入れてみました」と楽しそうに教えてくれた。
演じる上でカギとなっているのが、松を演じる柴犬、豆三郎の愛らしさ。津田さんのいるスタジオにやって来た豆三郎と初対面を果たしたといい、「豆三郎くんやん! うわあ、君か!って。めちゃくちゃうれしかったです。最初は僕も照れちゃって。『なんだろう、照れたぞ俺』と思って」と笑顔で述懐。「目が真っ黒でクリンクリンなんです。おとなしくて、本当にいい子。最高です!」とメロメロの様子で、「この可愛さ、魅力を視聴者の皆さんに存分に味わっていただきたい」とより一層、やる気につながったようだ。
また「『ほえて』と言うと、ほえてくれる。『まだ座ってて』と言われると『はい』みたいな感じで座っていて。芝居がめちゃめちゃ達者」と“役者・豆三郎”のすごみも証言。「映像から、豆三郎くんが一生懸命に演技をしていることが伝わる。そのニュアンスは極力拾っていこうかなと。あとちょっと困った顔をしているな、ここはりりしいなとか、(表情も)頑張って拾っています。せっかく演技をしてくれているので、できるだけ彼のニュアンスをお伝えできればなと。今後も頑張って拾っていこうと思っています」と力強く語る。
剛の青春ストーリーと共に、松の一挙手一投足も注目を集めている。松がいることで、ドラマにどのような味わいが加えられていると感じているだろうか。
津田さんは「松がいることによって、作品の豊かさがものすごく広がる気がしていて。もちろん笑えて、ほのぼのしたりするドラマですが、バイオレンスな一面もあって。そこに松が出てくることによって、見てくださっている皆さんが一気に和らぐといいますか。なおかつ、松が一生懸命に演技することによってコメディ要素も追加されていくので、とても大きな存在だなと思っています」としみじみと話す。
個性的なキャラクターが続々登場する本作の中で、推しキャラは「もちろん松が一番大好き」と愛情を傾けた津田さんだが、「間宮さん、最高ですね」と主演の間宮さんにもほれぼれ。「ヤンキーである時と、おとなしそうな学生である時のギャップ。そして根底に流れる熱いものが胸を打つ」と剛の魅力を分析しながら、「間宮さんは、やわらかさと鋭さをお持ちなんだなと。その二面が同居しているたたずまいがすてき。僕、間宮さんと誕生日が一緒なんです。仲良くなれたらすごくうれしいですね。僕は基本的にスタジオにいるので、いつか難破家の皆さんにお会いできるのを楽しみにしています。早く家族に会いたいです(笑い)」と願っていた。
「普通の青春を送りたい」と願う剛の高校生活を描く本作。津田さんは自身の高校時代について「“何者でもない自分”みたいなものに、すごくイライラしていて。わりと鬱屈していた」と告白する。「とっぴな行動をしたり、グレたりはしていないんですが、ポッカリと心に穴が空いているような。そんな青春時代を送っていました。中学生くらいの頃から、映画など、表現というものに出会って『なんだこのすごい世界は』と感じてはいて。こういった世界で生きていきたいなとほんのりと、でも強く思い始めました。早く何者かになりたかった」と振り返る。
今や声優としてはもちろん、俳優としても引っ張りだこになっている津田さん。声優や俳優を目指す高校生にメッセージを送るとしたら、「高校時代にしかできないことって、きっとあるような気がしていて。その時々にしかできないことに全力投球をしてほしい」と口火を切り、「変に背伸びもせず、オンタイムを生きていただけるのが一番いいのかなと思います。その体験はきっとこの先にはできないことなので、高校時代にしかできないこと、過ごせない時間があるはず。それは僕だって、今でもそうなんですが。ぜひそこを全力で体感してほしいなと思っています。体験は、血となり肉となっていくのではないかと思っています」と津田さん自身、今を大切に生きているという。新たなチャレンジを続けている津田さんの初の実写での犬役、そして松の活躍にこれからも期待がかかる。(成田おり枝/フリーライター)
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