らんまん:“1割のロケ”で飽きさせない映像作り 時間がかかる撮影を行う意義「物語上、重要なシーンと判断」

NHK連続テレビ小説「らんまん」の一場面(C)NHK
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NHK連続テレビ小説「らんまん」の一場面(C)NHK

 神木隆之介さんが主演するNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「らんまん」(総合、月~土曜午前8時ほか)。8月10日放送の第94回では、高知の山で植物採集をしていた万太郎(神木さん)が虎鉄(寺田心さん)と出会い、新種の植物「ヤッコソウ」を見付けるという、一連のシーンが描かれた。2人が出会う場面は、小石川植物園(東京都文京区)でのロケとなったが、朝ドラの長丁場の撮影の中で、ロケをする意味や苦労話を、制作統括の松川博敬さんに聞いた。

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 ◇日数は例年並みも「ロケシーンがとても効果的」

 ドラマでは第18週から第19週にかけて、東大を出入り禁止になり、長女・園子と死に別れ、ロシアへの渡航も断念と、万太郎にとって人生最悪の出来事が描かれてきた。

 その後に万太郎に訪れた虎鉄少年との出会い。ロケにした理由を、松川さんは「そのどん底の悲劇から再生の物語へと向かう上で、高知の植物採集旅行における虎鉄(とヤッコソウ)との出会いを、みずみずしい自然の中のロケーションで描きたいと考えました」と明かす。

 これまでも、幼き万太郎と坂本龍馬(ディーン・フジオカさん)との邂逅、名教館時代の蘭光先生(寺脇康文さん)の課外授業、上野の勧業博覧会での万太郎と寿恵子(浜辺美波さん)の出会い、高知への帰省シーン、タキ(松坂慶子さん)の最期、万太郎がムジナモを見付けた場面などでロケが行われた。

 植物学者の人生を描くということで、“自然の中でのロケシーン”は多くなっているが、実はトータルのロケ日数としては、朝ドラとしては例年並み。

 松川さんは「朝ドラは9割ほどのシーンをセットで撮影しています。残り1割のロケシーンが、ドラマ上とても効果的に描かれているため、体感としてロケ分量が多いと思われているのではないでしょうか。視聴者の皆さんの満足感につながっていればうれしいです。準備が大変なロケを行う意義は、やはり物語上、重要なシーンだと判断してのことですね」と語った。

 ◇“およそ5分”の放送時間のために合計8時間ほど撮影

 準備が大変、という意味では万太郎と虎鉄の出会いのシーンは、天候は曇りで6月のジメジメした日に行われた。スタッフ、キャストは朝早く集まり、“およそ5分”の放送時間のために合計8時間ほどの撮影を行った。

 ロケ現場では、演出や照明、音声やメークだけでなく、多くのスタッフが携わっている。

 植物監修の担当者は、撮影でそのまま使用できる植物を探したり、そこに生えている植物が時代背景など齟齬(そご)がないか確認し、俳優たちの植物の抜き方や切り方に不自然がないかなど、細かいことに気を配りながら撮影をしている。

 第19週のタイトルにもなった「ヤッコソウ」は、撮影で使用することが決まっており、製作会社と連絡を取りながら、レプリカを用意する担当者もいた。

 さらに、植物採集のロケ現場では発砲スチロールでできた石や土などを用意して、情景を整えたり、周囲に自生している植物が時代や季節に合っていないものであれば、画面に映らないようにすることもあるという。

 松川さんは「スタッフとキャストの距離感は近いと思いますし、お互いに忌憚(きたん)なく意見を出し合いながら撮影を進めています。とてもいいチームワークができていると思いますし、現場の雰囲気もとてもいいと思います」と胸を張る。

 ドラマ撮影では、わずか数分、数秒のシーンでも多くの人がそれぞれのこだわりを持って、妥協ない仕事をしている。特に「自然」「植物」が相手では、事前準備がいかに大変で、大切であるかを一人ひとりが自認して取り組んでいる。この丁寧な仕事がつなぎ合わさり、わずか1割のロケでも、飽きさせない映像を提供し続けてくれているのだろう。

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