解説:スタートまで2週間 次期朝ドラ「ばけばけ」舞台やタイトルの意味… 「あんぱん」に続く夫婦の物語の“基本”おさらい

連続テレビ小説「ばけばけ」のご当地ビジュアル (C)NHK
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連続テレビ小説「ばけばけ」のご当地ビジュアル (C)NHK

 高石あかりさん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「ばけばけ」(総合、月~土曜午前8時ほか)が、9月29日にスタートする。「怪談」を愛するヒロインが、外国人の夫と共に、何気ない日常の日々を歩んでいく……という内容。放送中の朝ドラ「あんぱん」に続く、夫婦の物語となるようだが、時代背景や舞台、タイトルの意味、注目キャストなど、ここでは基本情報をおさらいしたいと思う。

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 ◇夫婦のモデルをおさらい 墓所は東京都豊島区に

 「ばけばけ」は113作目の朝ドラ。ヒロインの松野トキ、その夫となるレフカダ・ヘブンのモデルは、松江の没落士族の娘・小泉セツとラフカディオ・ハーン(小泉八雲)だ。ドラマの中では大胆に再構成し、登場人物名や団体名などは一部改称してフィクションとして描くという。

 原作はなく、NHKのドラマ「阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし」、WOWOWの「撮休シリーズ」などを手がけた脚本家・ふじきみつ彦さんのオリジナルとなる。音楽を、テレビアニメ「ダンダダン」、「チ。 -地球の運動について-」などの牛尾憲輔さんが担当。主題歌は、男女デュオ「ハンバート ハンバート」の「笑ったり転んだり」に決まっている。

 夫婦のモデルについて簡単に説明すると、小泉セツ(1868〜1932年)は、松江藩家臣の小泉家の次女として生まれ、直後に稲垣家の養女になる。没落した家を支えるため11歳から織子として働く。1886年に結婚するも、1年で夫は出奔。その後、松江に英語教師として赴任してきたラフカディオ・ハーンのもとで住み込みで働くようになり、当時珍しかった国際結婚をする。再話文学の語り手として、ハーンの著作に大きく寄与した。

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 一方、ラフカディオ・ハーン(1850〜1904年)は、ギリシャ生まれのアイルランド人(英国籍)。アメリカでジャーナリストとなった後、1890年に来日。松江に英語教師として赴任する。その後、熊本五高、東京帝国大学、早稲田大学でも教鞭をとる。1896年、小泉セツと結婚、日本に帰化し、小泉八雲を名乗る。「知られぬ日本の面影」「怪談」など、日本の古来の文化を記した著作は高く評価されている。

 ちなみに、二人の墓所は東京都豊島区にある雑司ヶ谷霊園。都内屈指の繁華街・池袋からさほど遠くはないものの、近くを都電荒川線が走るなど、どこかのんびりとした空気が流れる喧騒とは無縁の場所で、いまも静かに眠っている。

 ◇「怪談話が好き」が共通点 「化ける」物語に?

 物語の始まりは明治時代の松江。松野トキは、怪談話が好きな、ちょっと変わった女の子。松野家は上級士族の家系だが、武士の時代が終わり、父が事業に乗り出すものの失敗。とても貧しい暮らしをすることに。世の中が目まぐるしく変わっていく中で、トキは時代に取り残されてしまった人々に囲まれて育ち、この生きにくい世の中をうらめしく思って過ごす。

 極貧の生活が続き、どうしようもなくなったトキのもとに、ある仕事の話が舞い込んでくる。松江に新しくやってきた外国人英語教師の家の住み込み女中の仕事。外国人が珍しい時代、世間からの偏見を受けることも覚悟の上で、トキは女中になることを決意する。

 その外国人教師はギリシャ出身のアイルランド人。小さい頃に両親から見放されて育ち、親戚をたらい回しにされたあげく、アメリカに追いやられ、居場所を探し続けて日本に流れ着いたという。

 トキは、初めは言葉が通じない苦労や文化の違いにも悩まされるが、お互いの境遇が似ていることに気が付き、だんだんと心が通じるように。しかも、二人とも怪談話が好き。へんてこな人々に囲まれ、へんてこな二人が夜な夜な怪談話を語り合う、へんてこな暮らしが始まる……。

 以上のようにドラマの舞台は松江。その後、ヒロインの人生が進むにつれて、熊本など各地に移り変わっていく。ということで“ご当地”は島根と熊本。今月1日には、高石さんの手書きメッセージが添えられた朝ドラ恒例のご当地ビジュアルが公開済みだ。

 なお、NHKによると本作は「化ける」物語だという。急速に近代化が進む明治の日本は、人々の暮らしや価値観がどんどん「化けて」いく。その中で取り残された人々の思いは、時に怪談という物語に形を変え語り継がれてきた。それと同じように、うらめしかったヒロイン・トキの世界も、いつしか、かけがえのないすばらしいものに「化けて」いく。だからタイトルは「ばけばけ」だとか。

 ◇“天陽くんフィーバー”も忘れ難い吉沢亮に…

 注目のキャストだが、まずはヒロイン・トキを演じる高石さん、そして、ヘブン役のトミー・バストウさんだ。高石さんは応募2892人、バストウさんは応募1767人の中から、それぞれオーディションによって選ばれた。

 高石さんは、ダンス&ボーカルグループ「α-X’s(アクロス)」のメンバーを経て、2019年から本格的に俳優としての活動を開始。2021年に映画第1作が公開された「ベイビーわるきゅーれ」シリーズで注目を集め、今年1月期のTBS系日曜劇場「御上先生」の演技も話題となった。

 バストウさんは、真田広之さんがプロデュース・主演を務めたドラマ「SHOGUN 将軍」で、メインキャストの一人であるマルティン・アルヴィト司祭を演じたことで知られる、英国出身の俳優。高石さん、バストウさんともに「ばけばけ」が初の朝ドラとなる。

 ドラマは今年3月にクランクインし、4月になると主演の高石さんが、父・司之介役の岡部たかしさん、母・フミ役の池脇千鶴さん、祖父・勘右衛門役の小日向文世さんらと共に京都市内で撮影をスタートさせた。その前後にも次々とキャストが発表。トキとヘブンの人生に大きな影響を与える錦織友一を、吉沢亮さんが演じること、トキに武家の娘としての教養を厳しく教える雨清水タエを、北川景子さんが演じることなどが話題となっている。

 約6年前の朝ドラ「なつぞら」(2019年度前期)における“天陽くんフィーバー”も忘れ難い吉沢さん。同局の大河ドラマ「青天を衝(つ)け」(2021年)の主演や映画「国宝」の大ヒットなどを経て、どんな姿を見せてくれるのか。本作で朝ドラデビューを果たす北川さん共々、一つの大きな見どころになるのではないだろうか。

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