じゃあ、あんたが作ってみろよ
最終話 不器用な愛で、変われ!
12月9日(火)放送分
高石あかりさんがヒロインを務めるNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「ばけばけ」(月~土曜午前8時ほか)の脚本を担当するふじきみつ彦さん。これまで手がけたのは深夜ドラマが多く、半年間にわたる物語を書くことに「これは大変になるだろうなぁと思った」と正直な胸の内を明かす。子育てと執筆を両立するふじきさんは、どのような思いで執筆と向き合っているのか、話を聞いた。
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「ばけばけ」は、松江の没落士族の娘・小泉セツとその夫・八雲(ラフカディオ・ハーン)夫妻をモデルに、「怪談」を愛するヒロインが、外国人の夫と共に、何気ない日常の日々を歩んでいく姿を描く。
「ばけばけ」で初めて長編ドラマを手がけるふじきさん。今まで書いた最長の作品は、朝ドラと同じ1話15分で、32回の放送があったNHKのよるドラ「褒めるひと 褒められるひと」(2023年)だ。
「よくある1時間を12回のようなドラマを書いたことがなく、ほとんど深夜ドラマとNHKという感じでした。連ドラっていうものに対する向き不向きみたいなことさえ分からないくらい、ドラマを書いてないという状態でした」
朝ドラの放送回数は125回前後。自身最長の「褒めるひと 褒められるひと」と比べても、4倍ほどの長さだ。そのため、オファーを受けた際のふじきさんの心境は「これは大変になるだろうなぁ」。それでも「引き受けたからにはやらなきゃいけない。頑張ろうという気持ちでした」と振り返る。
また、ふじきさんは「先を見通して物語を書くこと、終わりまでの筋を付けることが苦手なタイプ」と自己分析する。
「制作統括や演出と話し合い、方向性が決まってしまえば書けるのですが、先々までの筋道を続けるみたいなことが、なかなか私としては苦労している部分ではあります」
最終回の構想も、現時点では「本当にぼんやりとしか浮かんでいない」という。一方で「ばけばけ」を書く上では、偉人としての小泉八雲夫妻ではなく、夫婦の日常生活にスポットライトを当てることを意識しているという。
「ヘブンが来日する第5週までは、トキの生い立ちや結婚と別れなど、いろいろなことが起こりました。僕の精神としては、実は『何も起こらない話』を書きたいなと思っています。でも、第4週まではどうしても何も起こらないわけにはいかなくて、二人が出会うまでの、トキの人生を描かないと先に進めないので書きました。本当は『人生の光でも影でもないところに光を当てたい』と思っていますし、隙を見て『あのあの話』のようなどうでもいい話をいっぱい書こうと思って頑張っています」
昨年から「ばけばけ」の執筆に取りかかっているふじきさん。普段は子育てに力を入れており、1日の生活サイクルは、朝4時に起きる“朝型”だ。
「朝の4時頃に起きて、6時までバーッと書いて。子供が起きてくるので、そこからはお父さんをやる時間。8時すぎに保育園に子供を預けに行って、9時から書き始めて夕方の5時半頃まで書いたら、保育園に子供をお迎えに行きます。そこからまたお父さんの時間になって、夜の9時半に子供と一緒に寝て、普段は4時、間に合わないときは深夜の2時に起きて執筆しています。基本的にそのペースを守ってやっています。子供が生まれて最初の半年間は苦しくて『なんでこんなに書く時間がとれないんだろう』と思いましたが、やればできるものですね」
ふじきさんは「書くことがすごく好きなので、書く時間があればあるほど、うれしいタイプ」と言うが、子供が生まれたことで仕事との向き合い方に大きな変化があった。
「子供が生まれる前は時間があったので、朝早く起きる必要もないし、夜中も何時まで書いても大丈夫。土日もフルで使えました。子供が生まれてすぐコロナ禍になり、家庭にいる時間も増えました。最初は何とか5分でも隙間を見つけて書こうという感じでしたが、これは一回割り切らないと書けないなと。子供がいる時間は子供と絶対に一緒にいる。仕事はしないと割りきったら、その時間に集中するようになって楽に仕事に向かえるようになりました」
一方で「状況の変化に流されようという感覚が自分の中にある」と語るふじきさん。その考えは、脚本の執筆にも反映されている。
「人が考えることを割と全部受け入れてしまう。僕のやり方はこうだからという頑固さはあまりなくて、唯一あるとするとせりふのニュアンスや語尾は変えてほしくない気持ちは強くあります。いろいろな都合で台本を変えてくださいみたいなことが仮にあったとしても、『そういうふうに言う人がいるなら、もうちょっと面白くする方法を探すか』みたいな感じで。絶対こうしたい、みたいなことをあんまり言わないというか。言い合いしている時間があったら、面白い方法を考えた方が早いなっていうのと、争い事があまり好きじゃないっていうのもあるかもしれないです」
最後に、今後の見どころについて「ヘブンが松江に来ますので、第4週までとは雰囲気がガラッと変わります」とアピール。
「これまでも登場していた長屋などに加えて、松江のいろいろな景色が出てきますし、ヘブンがいろいろ引っ掻き回したりもするので、そこをぜひ見ていただけたらと思います。トミーさんもすごく頑張っていて、いい役者さん。ヘブンが出てくることで、旅館のキャストの方など新しい出演者も増えますので、楽しみにしていただければと思います」
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