ふじきみつ彦:「ばけばけ」脚本家が語る第8週の見どころ「登場人物がみんなでスキップ」 “ビア探し”エピソードは史実を参考に

NHK連続テレビ小説「ばけばけ」で脚本を手がけるふじきみつ彦さん
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NHK連続テレビ小説「ばけばけ」で脚本を手がけるふじきみつ彦さん

 高石あかりさんが主演を務めるNHK連続テレビ小説「ばけばけ」(総合、月~土曜午前8時ほか)の脚本を担当しているふじきみつ彦さん。脚本に込めた思いや、第36回(11月17日放送)の“ビア探し”エピソード、第8週の見どころなどについて語った。

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 ◇キャッチコピー「この世はうらめしい、けど、すばらしい。」誕生の経緯

 「ばけばけ」は、松江の没落士族の娘・小泉セツとその夫・八雲(ラフカディオ・ハーン)夫妻をモデルに、「怪談」を愛するヒロインが、外国人の夫と共に、何気ない日常の日々を歩んでいく姿を描く。

 初めて朝ドラの脚本を担当するふじきさんは「朝ドラは15分×125回あります。私が今まで書いた最長の脚本が、同じ15分で全32回の夜ドラでした。その時も『長いな』と思ったぐらい、これまでよくあるサイズの連続ドラマを書いたことがなかったんです」と明かす。

 「連続ドラマに対する向き不向きもわからないぐらいなのに、朝ドラの長さは経験したことがないことのさらにさらに上をいくものでした。最初にお話しをいただいたときはこれは大変だなと思いましたが、引き受けたからには頑張ろうと思っています。実際に書き始めてからは、書くことの長さは実はそんなに感じていません。先を見通してものを書くタイプではないので、スタッフのみなさんと一週一週の内容について打ち合わせを重ねて書く、ということを繰り返しています」

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 本作のキャッチコピー「この世はうらめしい、けど、すばらしい。」は、どのようにして生まれたのだろうか。

 「もともとはキャッチコピーとして考えたわけではなかったんです。制作統括の橋爪さんが『ばけばけ』の企画書を提出するときに、そこに『ばけばけ』とはどんな話かというのを一枚くださいと言われて、そこに書いた内容の大見出しがこの言葉でした。まだドラマの大きな筋も決まっていなかったので、小泉八雲の怪談に引っ張られて、『うらめしい』というワードが出てきて、あまり考え込まず、すんなりと書いた覚えがあります」

 トキ(高石さん)やヘブン(トミー・バストウさん)の生き方について「貧しかったり、両親と疎遠だったり、うらめしいことが続いたという共通点があります」と説明。

 「そんな二人が出会って、“うらめしい”から“すばらしい”に化けていく。そんな『ばけばけ』の精神がひとことで表せたら良いなと思って、書いたのがあの文章でした。トキとヘブンに限らず、この物語に出てくる人はみんなうらめしいことがあります。それでも、笑顔を忘れないというか、どこかでこの世はすばらしいととらえて生きている登場人物たちであってほしいという願いも込めて書きました」

 ◇第8週は“スキップ”エピソードに注目

 11月17日放送の第36回では、トキがヘブンから「Beer(ビア)」を買ってくるように頼まれ、コミカルなやり取りを繰り広げるシーンがあった。ふじきさんはこの場面について「松江に取材で行った時に、八雲が薬局でビールを買っていたという話を聞いたので、それをぜひ使いたいなと思っていました」と話す。

 「女中であるトキがビールを買うよう頼まれたとしたら、当然ビールのことは知らないからどういう風に買うのだろうと考えた結果、このようなビア探しのエピソードになりました。僕にとっては王道の回です」

 第8週の見どころについては、「今週は登場人物がみんなでスキップを練習するエピソードもあります」という。

 「史実に八雲がスキップをしていたという話は全くないので、これは僕の想像です。一緒に身体を動かして楽しむことで、トキとヘブンの仲が縮まっていくとさらに良いなと思いました。“ビア”は言葉遊びみたいなところがあったので、他に西洋のもので身体を動かしたくて、『この時代の日本の人はスキップはやっていなかったのでは』とふと思いつきました」

 「着物でやるのは大変かなとも思いましたが、一回書いてみたうえで演出の皆さんに委ねようと、先に書いてしまいました。そうしたら『(着物でも)できます』という話になったので、ぜひぜひ、みんなにスキップしてもらおうと。スキップは難しくてなかなかコツがつかめない、でもつかめたら一生できるという面白さがある動きです。それを大の大人たち、すてきな役者さんたちがすることで、面白いシーンになっていると思います」

 ◇今後の見どころは?

 今後の見どころについては「これから、トキとヘブンが一緒になるまでをじっくり書いています」と語る。

 「トキにとっては、まったく初めて見る異国の人。価値観の違いよりももっと手前の、本当に何も知らないところからの始まりでした。ヘブンも全然知らない土地である日本に初めて来て、怖かったと思います。そんなふたりが、全然自分とは違うことをどう受け入れていくか。ヘブンのモデルの八雲も『オープンマインド』と言っていますが、心を開いて、なんとか分かろうとして、お互いに歩み寄っていきます」

 さらに、「今後も、『ばけばけ』というタイトル通り、いろんなことが“化けて”いきます」とアピール。

 「うらめしいことだったり、悲しいことだったり、それがちょっとずつすばらしいものに変わっていくのを、見ていただけたらうれしいです。そして、何も起こらない週が来た時に、『あ、何も起こらないのに面白いな』と思ってもらえたら、それが一番うれしいです」

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NHK連続テレビ小説「ばけばけ」の人物紹介図 (C)NHK
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