ばけばけ：キャスティングは難航も…“ヒロイン母”に池脇千鶴を起用したワケ　朝ドラ出演は24年ぶり「ヒロインの経験があって頼りになる存在」

2025年11月14日 08:15

MANTANWEB編集部

　高石あかりさんがヒロインを務めるNHK連続テレビ小説（朝ドラ）「ばけばけ」（月～土曜午前8時ほか）。第35回（11月14日放送）では、トキ（高石さん）の母・フミ（池脇千鶴さん）が、育ての母としての複雑な感情を爆発させるシーンが描かれた。この場面での池脇さんの演技や、池脇さんを母親役に起用した理由について、今作で制作統括を務める橋爪國臣さんに話を聞いた。

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　◇池脇千鶴の存在で「松野家が成り立っている」

　第35回では、三之丞（板垣李光人さん）と対峙（たいじ）したトキは、物乞いとなった実母のタエ（北川景子さん）を助けるため、ヘブン（トミー・バストウさん）の女中になったことを明かす。トキの本音を聞いたフミは、「生みの親のためなら体を売ってもええと……」と嫉妬やプライドが入りまじった複雑な感情を吐露した。

　橋爪さんは「あのシーンは、トキと三之丞のシーンのように見えて、実はフミのシーン。トキの話を聞いて、フミが育ての母としてどう思うかというところを描いています」と明かす。

　「実の親のためならラシャメン（洋妾）になるけど、育ての親のためにはなれないのか、と。フミにはトキを育ててきたプライドや自負もあるし、親の愛情もある。そこを否定された気分になったけれど、トキの本当の気持ちを知り、自分の中で納得するというシーン。池脇さんの表情の作り方や間合いも本当に素晴らしいですし、このシーンのために気持ちを作っていて、その爆発力がすごい。池脇さんがどっしり受け止めてくれるからこそ、高石さんもあれだけ自由に演じられているんだと思います」

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　そんな池脇さんの演技について、橋爪さんは「池脇さんがいるからこそ、松野家が成り立っている」と話す。

　「高石さん、（司之介役の）岡部たかしさん、（勘右衛門役の）小日向文世さんが、それぞれ自由に楽しくお芝居をしているんですが、そこにちゃんと楔（くさび）を打つ芝居をして、みんなが離れていかないように繋ぎ止めてくれる。池脇さんがいるからこそ、松野家が締まるし、みんなが自由にコミカルな芝居ができる。コメディーシーンをちゃんとリアルに引き戻して、どっしり構えて芝居をしてくれているのは池脇さんです」

　◇池脇千鶴は「全員の母親のような存在」

　池脇さんが朝ドラに出演するのは、ヒロインを務めた2001年度後期の「ほんまもん」以来24年ぶり。久しぶりの朝ドラ出演となるが、現場では「すごく頼りになる存在」だという。

　「ヒロインとしての経験があり、現場のことをすごく考えてくれて、もっとこうしたらいいんじゃないかとアイデアもたくさんいただける。役としてもそうだし、裏でもみんなを引っ張ってくれる方。積極的に盛り上げるムードメーカーではないけれど、すごく気遣いをされる方なので、ずっと前室にいて何かあったら目くばせをしてくれる。直接言うと角が立つようなことも、うまく伝えて現場が回るようにアドバイスしてくれます。本当に現場でも、全員の母親のような存在です」

　そんな池脇さんを母親役に起用した理由を尋ねると、「実はフミ役のキャスティングは長い間迷ったんです」と意外な答えが返ってきた。

　「父親役の岡部さん、おじいちゃん役の小日向さんに関しては『この2人にすれば面白くなるよね』とすぐに決まって、早めに声をかけました。一方、母役に関しては、『誰だったらこの役をやれるんだろう？　とても難しい役だぞ』という思いがあり、いろんな人の名前を挙げては迷い……という感じでした」

　制作陣で話し合いを重ね、「コメディーになりすぎてはいけない。重くなりすぎてはいけない。周りが好き放題やる中、まとめる力を持った方でなければ」とキャスティングの方向性を固め、「池脇さんしかいない」という結論にたどり着いた。

　「ダメ元でいいからお声がけしてみたら、数日で出演のお返事をいただいて。良かったと安心しましたし、池脇さんだからできたことがたくさんあるので、本当にありがたいです。出ていただけてうれしいなと思いながら毎日撮影しています」

　池脇さんの出演が決まった際、橋爪さんと演出の村橋直樹さんは「面白くやろうとは一切思わないでください。徹頭徹尾、真面目に演じてください」と伝えたという。

　「最初の頃は『真面目に生きているから楽しいんだ』ということを、池脇さんはじめ、出演者の皆さんとよく話していました。端から見ると面白いことをやっているけれど、彼らは別に面白いことをやろうと思っているわけじゃなくて、真面目に生きている。その姿が面白い。出演者の皆さんもそれを意識して演じてくださっていますし、池脇さんのコメディ－シーンは、リアルだからこそ一番笑えるみたいなところがあって。本当に素晴らしいなと感心しています」