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解説:「豊臣兄弟!」“松永久秀と平蜘蛛”回が提示した心躍る「まさか」 脚本家・八津弘幸が語っていたこと

大河ドラマ「豊臣兄弟!」第20回の場面カット (C)NHK

 仲野太賀さん主演のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」(総合、日曜午後8時ほか)。5月24日放送の第20回「本物の平蜘蛛」では、副題通り「本物の平蜘蛛」をめぐって驚きの展開を見せた。「本物の平蜘蛛」の持ち主とされていた松永久秀(竹中直人さん)にスポットを当てつつ、物語は二転三転しながら最後、どこかさわやかな余韻を残すなど、脚本家・八津弘幸さんの“筆“も冴えまくった回だったといえるのではないだろうか。

 ◇「本物の平蜘蛛」を手に入れることができなかった久秀

 第20回の物語をざっとおさらいすると次の通りだ。

 信長(小栗旬さん)は、上杉攻めから離脱し、勝手に帰国した秀吉(池松壮亮さん)に激怒。蟄居(ちっきょ)のうえ、死罪に処すと申し渡す。羽柴家一同が助命嘆願に奔走する中、松永久秀が再び裏切ったという知らせが入る。ここで九死に一生を得た秀吉は、小一郎(仲野さん)とともに、久秀の元へ。2人は談判に臨み、唯一無二の茶器・平蜘蛛を渡せば謀反は不問にするという信長の意向を伝える。だが久秀は、破格の条件にもかかわらず、大和の地にこだわり、頑なに応じようとしない。

 ここで久秀が秀吉と小一郎に見せたのは「二つの平蜘蛛」。どちらかが本物で、どちらかが偽物だといい、もし万が一、本物を見抜くことができたら、秀吉らの言う通りにすると約束する。

 ここで小一郎は、平蜘蛛の一つを手にとって、投げ割ろうとする。思わず久秀は待ったをかけてしまい、小一郎が手に取ったのは「本物の平蜘蛛」だと判明したかと思いきや、実は二つとも偽物で……。

 ついに「本物の平蜘蛛」を手に入れることができなかったという久秀。やがて城内には煙と炎が上がり、秀吉と小一郎を前にして久秀は「何が本物で、何が偽物かなど、そんなものはどうでもいい。お前らもせいぜい苦しむがいい。うまく信長を欺くんじゃぞ。まがいものをうれしそうにめでる、信長のまぬけな姿を、あの世からとくと楽しませてもらうわ」と告げると、焙烙玉を火に入れ、笑い声を上げながら“爆死”してみせた。

 ◇本物の持ち主は信長? 偽物から発見された“宝の地図”

 では本物の平蜘蛛はどこに? その答えとなりそうなシーンは終盤に用意。信長が一人でいるところに、市(宮崎あおいさん)が現れ、「いつ見ても美しいものですね。本物の名器というものは」と話しかける。「そうじゃな」と答える信長と市の目線の先には、(たぶん)本物の平蜘蛛が……と展開した。

 さらに物語には続きが。小一郎と秀吉が持ち帰った偽物の平蜘蛛の底から「南朝が残した財宝にまつわる絵図」が発見される。

 それは久秀が生前、大和にこだわる理由として「かの地には、お宝が眠っておる。かつて吉野に南朝があった頃に隠された膨大な金銀財宝じゃ。それだけではない。唐や朝鮮から渡来した文物、武具、そのほか目もくらむような美しきお宝が山ほど眠っておる。わしはそのことが記された絵図も手に入れた。ゆえに大和は誰にも渡したくないのじゃ」と語った内容を裏付けるもの。

 小一郎は、久秀の「たとえざれ言であってもかような夢があっていい」との言葉を思い出し、秀吉に「兄者、いつの日か、わしらで確かめよう」と話しかけると、秀吉も「そうじゃの」と笑顔でうなずきつつ、「まずは播磨じゃ」と口にしたところで同回は終了した。

 ◇いかに史実とエンタメをせめぎ合わせていけるか

 第20回「本物の平蜘蛛」が「神回」であったかどうかは別として、歴史ドラマの楽しさ、面白さがぎゅっと詰まった回であったことは間違いないだろう。

 同回を見て(見直して)みて、思い出したのが、2024年3月、「豊臣兄弟!」の制作が発表された際の八津さんの言葉だ。

 「豊臣兄弟!」のような史実がベースになった作品を手がけるのは「大きなチャレンジ」だという八津さんは 「出来事の結果が決まっているので、ドラマ的にはこうなってくれたほうが面白いのに、という展開も絶対に出てくると思います。どうしても史実通りにやらなきゃいけないところはそうしますし、わずかな可能性を見いだして、いかに史実とエンタメをせめぎ合わせていけるか。そこが課題だと思っています」と語っていた。

 さらには「もちろん『それはウソじゃん』と言われないように非常に頑張ります」と意気込みながら、「『もしかしたらこうだったんじゃないか』みたいなところは、すごく大事にしていきたいなと思っています。視聴者の皆さんに楽しんでもらうという意味で『まさか』ということができればいいなと思っています」と話していた八津さん。

 その言葉通り、史実と伝承、逸話、そしてエンタメ要素がせめぎ合った結果の心躍る「まさか」。この先、何回出会えるのか、楽しみが増したことは間違いない。(岸谷史生/MANTANWEB)

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